バガン

     

バガン・アジアの旅

 
日本の2倍近い面積を有するミャンマー(ビルマ)は、数多くの見どころがある国。国民の多くが敬虔な仏教徒であるミャンマーは、“微笑の国”とも呼ばれています。
 
ヤンゴンから国内航空線で1時間20分の地点にあるのが、アンコールワット、ボロブドゥール寺院と並び、世界3大仏教遺跡に数えられるバガンです。
 
バガンは、“ミャンマーの命“と呼ばれるイラワジ河(現在はエーヤーワディ河と呼ばれていますが、私は”イラワジ河”の方がピンと来るのでお許しを…)の西域に広がる仏教遺跡の町。「えっ、これが空港?」というほどのんびりしたバガン空港から少し車で走ると、早くもパゴダ、パゴダ、パゴダのオンパレード。赤土の平原に、幻想的な遺跡群が広がる光景は圧巻です。
 
バガンは今でこそ猛暑の乾燥地帯ですが、かつては緑豊かな地だったとか。それが11〜13世紀にパゴダ建設が隆盛になり、パゴダを造るレンガを焼くため、どんどん木を伐採し、砂漠化してしまったそうです。
 
バガンの歴史は、ビルマ族がバガン内陸部19の村を統合して、アリマンダナプラ国を建設したのが始まりと伝えられています。
 
11世紀半ば、第42代アノーヤターが下ビルマ(モン族)と上ビルマを統一、ミャンマー初の統一国家バガン王朝を建設。以後11〜13世紀がバガンの全盛期で、現存するパゴダの多くはこの時代に建立されたもので、当時は5000以上ものパゴダがあったと言われます。
 
やがて1287年、ナラティハパティ王時代にフビライハン率いるモンゴル軍に攻略され、バガンは隷属状態に。結局、モンゴル支配は11カ月で終息、再びバガン王が3代続きましたが、往時の全盛は取り戻せず、以後ミャンマーの栄華は、イラワジ河上流地方へと移っていきました。
 
バガンに現存するパゴダは2223あり、修復中のものを含めると3000以上残存しています。バガン王朝期の王宮や家屋など、建物は木造だったため後世には残らず、レンガまたは石造りのパゴダ、寺院、洞窟だけが残ったのです。
 
ここで、パゴダについてひと言。
 
パゴダとは、仏舎利などを収めた仏塔のこと。基本的に内部には入れない造りになっています。パゴダや寺院、僧院の敷地内は聖域なので、土足は厳禁。入り口で靴とソックスを脱ぎます。
 
パゴダの中には、ほとんど廃墟と化しているものもありますが、その場合も内部に入る時は必ず裸足になること。パゴダ巡りには、素足+サンダル履きをお勧めします。
 
ミャンマーで広く信仰されているのは、南方上座部仏教です。ミャンマーはパゴダの国と言われるほど、首都ヤンゴンを始め至る所にパゴダがあります。
 
ミャンマーの大きな特徴のひとつは、パゴダが観光名所や遺跡としてではなく、人々の日常生活に深く根付いていること。ほとんどのパゴダで、祈る人々の姿を目にすることが出来ます。
 
★見どころ その@寺院巡り
バガンへ行くからには、寺院巡りは欠かせませんっ!
 
言わずもがなですが、バガンは世界的な仏教遺跡なだけに、各有名寺院の出入り口には、例によってお土産売りの女性や子供たちがたむろしています。
 
でも、他国の観光名所周辺の物売りに比べると、ぐっと穏やか。すげなく断っても、あるいはほぼ無視しても、ふてくされる風もなく、にこやか。しつこさもないので、かえって「ちょっと買おうっかな」という気になっちゃいます。
 
ネンピーヤ寺院
元来は、ヒンズー教寺院だったとか。11世紀半ば、モン族の王が捕虜になった時、この寺院に居住しました。寺院内部には、見事なヒンズー教の神を模した浮き彫りが残っていますが、残念ながら撮影は禁止です。
 
見学は、門番らしきおじさんが貸してくれる電球利用の照明板(!)を持って。建物の半分が石造り、残り半分がレンガ造りとなっています。
 
言ってみれば、この寺院は王が幽閉されていた刑務所だったので、他の寺院に比べ内部は暗め。捕虜たちは、どんな思いで日々を過ごしたのだろう……なんて、思わず想像しちゃいます。
 
アーナンダ寺院
11世紀末、チャンセタート王が建立した寺院で、建築学的に、バガンで一番バランスの取れた寺院として有名です。ヒマラヤにある洞窟を模倣して建てられた、とも言われています。実際、内部は洞窟みたいです。
 
入り口は東西南北の4つがあり、それぞれに仏像が置かれています。高さ約10m、北と南の仏像は往時のまま残存しており、東と西は修復されたもの。北と南の仏像は必見です。
 
仏像の顔は、近くで見ると厳しい表情をしているのですが、その顔を見ながら、徐々に後ずさっていくと、だんだん微笑んでいるように見えてくるからフシギっ! ←ホントざますよ! 写真撮影に失敗して、写真をお見せ出来んのが残念…。スミマヘン。 
 
そのワケを尋ねてみると、「この寺院には回廊が2つあります。その昔、おエラ方は内側、庶民は外側の回廊から、それぞれ仏像を参拝しました。地位のある人々には厳しい戒めを、庶民には慈悲の心で優しく見えるように造られたのです」とのこと。
 
いやはや、実に芸コマで奥深い意味を持った造りですね……。
 
このほか、寺院内部の壁面には、小さい仏像が1563体も設置されています。この寺院が、別名『仏像博物館』と言われる所以です。明り取りの窓もあちこちに配されていて、興味深い造りになっています。
 
建築素材はレンガが主体で石で補強されているため、度重なる地震にも耐え、歴史を今に伝えています。
 
テェヨピィー寺院
バガン王朝全盛期最後の王ナラティハパティが、13世紀に建立した寺院です。テェヨは「中国」、ピィーは「逃げる」の意味。
 
モンゴル軍が侵攻してきた際、ナラティハパティ王が逃げ出したため、“テェヨピィー”と呼ばれるようになったのだとか。
 
朽ちた印象の寺院ですが、外壁の彫刻は一部残存しています。寺院内部は階段で登ることが出来、上から赤土が広がる平原を見渡せます。
 
それにしても、平原に点在するパゴダの多いこと。静寂の中で平原を眺めると、しみじみ歴史の栄枯盛衰を感じます……。
 
タビニュー寺院
12世紀半ば、アラウンスディ王が建立した寺院で、「全てを知り、広く見渡す」という意味。パゴダの高さは約70mもあり、バガンの寺院の中で最も高いのが特徴です。アラウンスディ王は、計40以上ものパゴダを建てたと言われます。
 
この寺院は、外から見ると2階建てに見えますが、実は4階建て。かつて、仏教学校の校舎として使われていたこともあるとか。
 
以前は、壁全体に壁画がありましたが、修復時に白い石灰を塗ったため、現在は石灰に隠れて壁画はほとんど見えません。
 
思わず「もったいな〜い」と感じてしまいますが、地元の人によれば、「このお寺は、地元の住民たちが信仰する寺として、ずっと存続してきました。修復も、住民たちが『汚れたからキレイにしよう』と行ったため、壁画の保存にまで思い至らなかったのです」。
 
境内の裏手には、第二次世界大戦中にビルマ(当時)で戦死した日本兵を奉った慰霊碑もあります。私が訪れた時は、寺守の方が「日本の方ですか? お茶でもどうぞ」と言ってくださいました。
 
静かなバガンの地で、「ビルマと日本とはつながりが深いんだ」と改めて感慨にふけりつつ、一杯のお茶をご馳走になりました。
 
★見どころ そのA馬車体験
コレは、見どころと言うより、お勧めアクティビティですね、ごめんちゃい! バガンでは、現在も荷馬車が活躍中です。
 
自動車はメチャクチャ少なくて、庶民の足である荷馬車をあちこちで見かけます。
 
中には、「いくら何でも載せすぎじゃないの?」と思っちゃう馬車もあったりして……。「馬車ウマの如く働く」とはこーゆーことだったのねぇ、と妙に納得するやら、馬クンに同情するやら、心境はちょいと複雑……(荷馬車の馬クン達は長生きは出来ないとか。寿命はせいぜい5年程度と聞きました)。
 
さてさて、バガンでは2頭立て馬車に乗ってのパゴダ巡りが体験出来ます。バガンは年間を通じて乾燥した内陸性気候で、最高気温は約40℃(!)、最低気温は約16℃と、まるで砂漠のよう(野生のサボテンもアリ)なので、馬車体験は夕方をお勧め。気温が涼しくなるし、感激的な夕暮れの風景が見られるから。
 
コースで外せないのが、バガン最大で未完の寺院・ダマヤンヂー寺院と、見事な日没風景で有名なシェエサンドー・パゴダです。
 
ダヤマンヂー寺院は、平原の真っ只中にある大き〜な寺院です。建立時、レンガを積み上げた後にレンガとレンガの間に針を刺し、針がレンガ間に入ってしまったら、つまりレンガとレンガの間に隙間があることが判明したら、レンガ積みを担当した大工を、壁の中に埋めてしまった、というコワ〜イ言い伝えがあります。
 
そのためか、この寺院は時として幽霊が出るとも言われ、地元の人は決して夜には近寄らないとか‥‥。
 
シェエサンドー・パゴダは、約50mの高さまで登れますが、階段の勾配がかなり急で、運動不足の身には堪えます。トホホ。日ごろ、エクササイズに励んでいる方ならヒョイヒョイと身軽に登れるでしょう。(ワタクシがどちらに属するかは、言うまでもありましぇんな。もちろん、ゼイゼイ喘ぎながら登ったのであります。)
 
苦労して登った甲斐があり、頂上はチョー気持ち良いっ! サイコーの眺めで、登ってよかった! と思えること、請け合い。でも、下りがこれまた、怖かった……。
 
馬車体験では、素朴な村を訪問することも可能。私が訪れたのは、人口519人のプワソー村。牛や鶏などの家畜と村人が、文字通り平和に共存している穏やかな村でありました。たまたま出会った村の子供たちも、オチャメでかわいかったなあ。
 
★見どころ そのBポパ山
バガンに2泊以上する場合にお勧めしたい見どころが、バガン近郊にあるポパ山です。ミャンマーの精霊信仰・ナッ信仰で有名な聖地で、バガン中心部から、東南へ向かって車で約2時間ほどの地点にあります。
 
ナッ神は、非業の死などによりこの世に執着を残し、守護神になった霊を意味し、ミャンマーには合計37のナッ神(家の守護神、川の守護神、村の守護神など)があります。
 
ミャンマーでは、精霊を怒らせると厄災が降りかかると信じられており、今も、ナッ神を手厚く祀る人々が多く見られます。
 
岩山であるポパ山の山頂には、ナッ神を祀った祠(ほこら)やパゴダがあります。この山頂まで、徒歩約30分。
 
こ、この30分が侮れませんっ! 山腹に築かれた階段を、ひとすら登り続けるのです。
 
階段は何百段もあり、ココもかなりのゼイゼイものです。途中、人馴れしたサル軍団もいたりして(ちゃんと、エサのピーナッツ販売もアリ)、気分転換も出来ます。ただ、このサル軍団、人馴れしているためか、結構コワイ……(エサをねだるという意味デス)。
 
山頂からの眺望はすんばらしい! それにしても、この山登り、っちゅうか階段登りも、格好のエクササイズになります。ゼイゼイ。
 
★見どころ そのC椰子農家
バガンから近郊のポパ山に向かう沿道には椰子を栽培している農家があり、その一部は観光客の見学を受け入れてくれます。
 
家屋の外では牛がのんびり働き、家の中では椰子酒やミャンマー名物スナックの椰子アメを作っています。
 
椰子は、ま〜っすぐ高〜いノッポの木で、その幹をスルスルと実に上って実や葉を採取するんですね。農家の人々は、樹液、実、葉と、椰子の木を100%生活に利用しています。
 
椰子酒はまず、午後に採れたヤシの樹液を1日かけて発酵させます。次に、カメに約2時間入れて蒸発させながら、1滴ずつ(!)溜める手作り製法で作られます。
 
酒と言っても、アルコール度5〜6%程度のライトテイスト。それにしても、椰子の樹液が、午前の収穫と午後の収穫とでは味が違うとは、知らなんだ……(午前は甘く、午後は苦い)。
 
私が訪れた質素な農家では、ご主人が手作りのミニカゴに入った手作り椰子アメと採れたての白ゴマを「お土産に」と差し出してくれました。
 
「観光客だから、当然代金を支払わなくちゃ」と思いつつ、支払うジェスチャーをすると(ビルマ語が話せないので、必然的に身振り手振りでコミュニケーションを試みたのでありんす)、「お金はいらない」と辞退されちゃいました。
 
タダじゃ申し訳ないと思い、気持ちだけ、小額を渡してきました。
 
「う〜む、きっと旅行会社がコミッションを支払っているに違いない」とセコい考えを抱き、後日旅行会社に尋ねてみると……な、なんと、「いや、別に料金は支払ってませんよ。単に、○月×日に見学訪問させてくれ、と連絡しておいただけ」と言われました。
 
世の中ゼニが全てじゃないよ、と図らずも教えられた思いでした……。
 
★見どころ そのDニャウンウーマーケット
世界中どこでも、その土地のマーケットって、地元の人たちの生活が垣間見えてなかなか面白いもの。バガン庶民御用達の市場、それがニュウンウーマーケットです。
 
一般家庭の多くは冷蔵庫を持たないミャンマーでは、女性たちが毎朝市場に出かけ、その日の食料を仕入れるのが一般的。ニュウンウーマーケットは、生鮮食品から乾物、はたまた土産物まで、何でもアリで、市場ならではの活気に溢れています。
 
ここで、ミャンマーでのお買い物についてひと言。ニャウンウーマーケットに限らず、ミャンマーではいわゆる“ぼったくり”は余りありません。在住者によると、値段の交渉は一般的に、せいぜい20〜30%引きが限度とか。いきなり半額程度に値切るのは、逆に失礼に当たるそうです。ニャウンウーマーケットは観光客が多いので、値切り交渉は結構タフ。あんまりマケてはくれませんでした。とほ。
 
★見どころ そのE漆物工房
ミャンマー特産品のひとつ、漆物は、バガンとマンダレー近くの村が有名です。バガンでは、漆物工房の見学も出来ます。
 
漆物には、型の材料が竹(硬くて一般的)と馬のシッポ(軟らかくて壊れにくい高級品)の2種類があります。ミャンマーの漆物は、いずれも丁寧な手作り品。材料を編み、“漆を塗っては乾かす”という作業を3回繰り返します。
 
その上から模様を描き、色をつけて出来上がり。工房では、模様描きにトライさせてもらえますが、コレが実に難しい! 彫刻刀を使うのですが、コレが思うように動かんのです……。トホホ。器用さに自信のある方は、是非お試しを。
 
 
 (ここに掲載した現地情報は変更される可能性もありますので、ご了承くださ〜い。)
 
                 
 
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