フランダース犬 フランダースの犬の作者 |
||
|
子供の頃、『フランダースの犬』(原題:A Dog of Flanders)を読んで涙した経験をお持ちの日本人って、とても多いと思います(今は「アニメや映画を見て泣いた」という人が多いのかも…)。 かく言う私も、結末の悲しさに呆然とし、子供心にひどく衝撃を受けた覚えがあります(涙、涙)。 『フランダースの犬』のあらすじは今さらご紹介するまでもありませんが、ベルギーのアントワープを舞台に、孤児ネロと愛犬パトラッシュの、深い絆で結ばれた短い生涯を描いた物語です。 『フランダースの犬』の結末部分、ノートルダム大寺院での最後の場面は、思い出すだけで、胸キュン(←死語?!)です。ネロとパトラッシュは、ルーベンスの名画「キリスト降架」と「キリスト昇架」を見て、息を引き取ります。 さて、この児童文学の名作『フランダースの犬』は超有名ですが、作者のことは余り知られていないように思います。 ★20歳で人気作家に 『フランダースの犬』の作者、ウィーダ(本名マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー)は1839年1月1日(元旦!)、イギリスで生まれました。その生涯は、まさに波乱万丈だったようです。 父はフランス人、母はイギリス人で、ウィーダは父方のラテン系の気質を受け継ぐ、情熱家肌だったと推察されます。船員だった父は、ウィーダ生誕の頃から不在気味になり(ありがちなパターンですね)、ウィーダは母の手で育てられました。 その境遇ゆえ、ウィーダは父親への思慕の念がひときわ強かったようで、父をモデルとしたヒーローが登場する作品も見られます。 読書好きで文才に恵まれたウィーダは、20歳でロマンス小説作家として文壇にデビュー、たちまち人気作家となります。20代は、ロンドンの一流ホテルのスイートルームに住み、フランス人デザイナーの華麗な衣装に身を包み、華やかな生活を送りました。 28歳の時、40歳年上のイタリア人オペラ歌手と恋に落ち、恋人を追ってイタリアのフィレンツェに移住。しかし、その恋は実らずに終わりました。ウィーザって、ホントに情熱家だったんですね。 ★移住後も華麗な生活 恋愛では挫折したものの、30歳(1869年)には作家として不動の地位を確立すると共に莫大な資産を築き、イギリスとイタリアの社交界を中心に華麗な生活を送りました。 犬好きだったウィーザは、イタリアで何匹もの犬と暮らし、30代の頃は、犬にもフォアグラやキャビアといった高級な食べ物を与えていたと言われます。イタリアの動物愛護協会の設立にも貢献しました。 32歳の時(1871年)、ベルギーのアントワープを旅行。この時見聞した事実を元に『フランダースの犬』を創作、翌1872年、イギリスで同書を出版しました。 ここで、フランダース犬についてひと言。 当時、アントワープの村は貧しく、馬を持てるのは金持ちだけで、庶民は馬よりも安い犬に搾乳器の荷車を引かせていました。力の強い犬をかけ合わせたのがフランダース犬で、公式名称はブービエ・デ・フランダースです。 このフランダース犬は、フランドル(中世時代、現フランス、ベルギー、オランダに領土がまたがった国) 地方が発祥地で、血統的にはベルギー産とフランス産の2つがあると言われます。 ウィーダに話を戻しましょう。 『フランダースの犬』出版から6年後(1878年)、ウィーザは再び大恋愛を経験しますが、その恋人はウィーダの友人とも恋愛関係にあり(早い話が三角関係)、結局この恋も実らずに終わりました。 この頃のウィーダは、恋愛関係で挫折と苦渋の思いを経験する反面、作家としてはイギリスで作品が続々とベストセラー入りし、人気の絶頂期を迎えました。 40代に入ると、情熱溢れる作品を発表し続ける一方で、詩情に満ちた芸術的短編小説やエッセイを出版するようになります。プライベート面での度重なる艱難(かんなん)辛苦に満ちた経験が、ウィーザの作風に影響を及ぼしたのでしょうね、きっと。 ★裕福から困窮へ 若い頃から華やかな生活を続けてきたウィーザですが、金銭に無頓着な性格もあり、50代になると資産が底をついてしまいました。 現代なら、稼ぎがよかった頃(20代の頃、既に作品1本で1000万円以上稼いでいたとか)にせっせと金融投資や不動産投機を行うところでしょうが、なにせ、日本で言えば江戸末期から明治前半にかけての時代。 個人的憶測ですが、老後の貯蓄なんて考えなかったようですし、富裕で気前のよいウィーザを経済的に利用する人もいたのかもしれません。 55歳の時(1894年)にはとうとう家賃が払えなくなり、馬車に押し込められ、居住していたルッカ郊外のヴィラを追い出されてしまいます。 その後、イギリス人が多数住む山間の温泉地にあるホテルに引っ越しますが、不慣れな田舎暮らしと犬が原因となり、再び追いたてに遭います。 経済的にひどく困窮した状況下、ウィーザの動物への愛情は深まる一方だったようです。この頃のウィーザは、自分の食事はろくにとらず、犬や猫にエサを与えていたと伝えられています。 ウィーザはイギリス政府から小額の年金を受けていましたが、そのお金も、犬や猫の食事代に使っていたと言われます。誇り高い人物だったため、友人らの援助申し出も断ったとか。若い頃から成功していただけに、プライドが高かったのも頷けますね。 60代半ば頃には、駅前広場の馬車の中でホームレス的生活を送るようになりました。その頃、ウィーザの胸中に去来したものは何だったのか、知る由もありませんが……。 厳冬の中、ウィーザは肺炎を患い左目を失明、見かねた人たちが安アパートに収容しました。しかし衰弱が激しく、1908年1月25日、ヴィアレギオという町で看取る人もなく、69歳でこの世を去りました。 孤独なウィーザの死を悼んだのであろう、ルッカに駐在していたイギリス領事が、ウィーダの友人たちから募金を募り、バーニ・デ・ルッカにあるイギリス人墓地に墓を建立、そこに埋葬されました。 ★人気絶頂期の悲話創作 ウィーダは、作家として成功し、いったんは富豪になりましたが、心の底から信頼出来る友人はいなかったようです。裕福になればなるほど、人間に対する不信感が高じ、恋人たちの心をも疑うようになったと言われます。 詳細は不明ですが、不信感が強まった背景には、金銭目的で近づいてくる人々の存在や、友と思っていた人との金銭絡みのトラブルなどがあったのかもしれません。 対人関係での満たされない思いが、人間を裏切らない犬へと注がれていったのでしょう。猫は飼っていたのかどうか不明ですが、どのような形であれ、猫にもエサを与えていたようです。 興味深いのは、悲劇的結末を迎える『フランダースの犬』が、作者ウィーザの人生の絶頂期とも言える32歳の時に書かれたこと。 当時の彼女の作風は、明るいラテン的なロマンス小説が多く、これでもかと言うほどの不幸に襲われ続ける孤児ネロと愛犬パトラッシュの物語『フランダースの犬』は、ひときわ異彩を放っています。 もしかすると、表面的には華やかな生活を送りつつも、ウィーザは既に、人間社会の不条理を強く意識していたのでしょうか……。『フランダースの犬』の中に、当時の社会の閉塞性を垣間見る思いがします。 日本や韓国などで絶大なる知名度を誇る『フランダースの犬』は、地元ベルギーのアントワープでは、意外にも知名度が余りありませんでした。2003年にノートルダム大寺院の前にネロとパトラッシュの石碑が建てられ、最近は地元でも徐々に『フランダースの犬』に対する認識が高まっているようです。 窮乏の中、1人寂しくこの世を去っていったウィーザですが、『フランダースの犬』は没後100年近く経った今も世界中の人々に愛読され続けており、ウィーザもきっと天国で喜んでいるのではないでしょうか。 ★本邦初訳の主役は”清とぶち” 『フランダースの犬』を日本で初翻訳し紹介したのは、日本基督(キリスト)教会の牧師で翻訳家でもあった、日高善一牧師です。 原作を読んで感銘を受けた日高牧師は、日本の子供たちに感動の名作『フランダースの犬』を伝えるべく、熱心に翻訳したそうです。 当時は、日本人に親しみやすいようにとの配慮から、『フランダースの犬』の主人公・少年ネロは清(きよし)、愛犬パトラッシュは斑(ぶち)と訳されました。きよしとぶち、なんてオチャメ♪ 現在出版されている中では、岩波少年文庫版(野坂悦子訳)『フランダースの犬』がお勧め。ウィーダの代表作で、明るい作風の『ニュールンベルクのストーブ』が同時収録されています。 尚、アメリカで出版されている『フランダースの犬』は、主人公が死ぬのでは救いがないとの理由から、結末が改変されています。ネロとパトラッシュは聖堂で死なず、ネロの父親が名乗り出てハッピーエンドになるという、いかにもアメリカらしい味付けの結末となっています。 Copyrights(C)動物らんど All Rights Reserved. |
![]() いんやあ、フランダース犬じゃ ないんだけど、まあちょっと似てる から、出演依頼されたワケ。 ![]() ボクも読もうと思ったのに 本が見つからんワン(涙) ![]() ナンだか、あの水おいしそ… ![]() これ、何だワン? ![]() フィレンチェよいとこ 一度はおいで〜 ![]() ヨーロッパ、寒そ…… ![]() フランダース犬は、第1次大戦時は 警察犬としても活躍! でも戦後は 数が激減して大変だったんだ ![]() 我輩は考えるイヌである ![]() 夕日に向かって何思うキミ… ![]() このエリマキ、暑いワン… ![]() 孤独だったんだね、 晩年のウィーザは ![]() パトラッシュ、かわいそ… ![]() インテリアに溶け込んで ぬいぐるみみたい… |
|
| 動物と出会うアジアの旅 南国路地裏猫物語 ご当地エッセイ 動物おもしろ話 動物と小説 動物ニュース 動物と癒し |
||