警察

    

警察に出向くハメに?!


日本でもそうだが、まさか異国の地で、警察のご厄介になる日が来るとは夢にも思わなかった。人生、思わぬ時に思わぬ出来事に出くわすものである。
 
なぜ、警察のお世話になるハメに陥ったかを説明するにあたって、まずA氏のことから触れておこう。(A氏は警察とは全く無縁である。)
 
★A氏との出会いと別れ
 
海外に在住していると、日本人との出会いと別れの機会が多い。これまで、様々な日本人との出会いがあったが、中でも、A氏との出会いは忘れ難い。
 
西日本出身のA氏は、東京でサービス業関連の大手企業に勤務、タイ駐在員を経て、同国で米系企業への転職を果たした。
 
こーゆーパターン、つまり海外駐在中あるいは本帰国決定時に駐在先で転職するケースは、少なくとも東南アジア地域に限って言えば、一昔前までは余り多くなかったと思うが、近年は増加しているようである。
 
A氏は、そうした傾向の先駆的存在で、90年代前半に現地転職を果たした。そして、タイ人女性と結婚したA氏は、シンガポール駐在となった。
 
A氏と知り合ったのは、同氏のシンガポール着任間もない1998年のことだった。同僚と営業に行った先の担当者がA氏で、第一印象は失礼ながら、かなり悪かった。
 
アジアと業界について博識なA氏は、饒舌に体験談を話してくれたのだが、どうも冷たい印象が否めず、同僚と2人でどっと疲れて帰社したのを今でも覚えている。
 
我らの営業は徒労に終わったものとばかり思っていたが、A氏の方は気に入ってくれたようで、思いがけず彼の会社と取り引きが出来ることになった。
 
正直言うと、当初は恐る恐るA氏の元を再訪したのだが、会う回数が増えてA氏の人となりを知るうちに、「な〜んだ、いい人じゃん!」と思えるようになった。
 
常にパリッとした身だしなみ、銀縁メガネに細面の顔立ち、日本語も英語も早口に操るA氏は、初対面ではクールと言おうか、イマイチ近づきがたい印象を与えがちなのだが、その実、正義感が強く義理人情にも厚い人だとわかった。
 
その後、約3年間ほど、A氏の会社との取り引きが続き、A氏との親交も深まっていった。そしてある日、A氏が所属する米系大企業の経営者交替に伴い、経営戦略が大幅に変更され、我輩が勤めていた会社との取り引きもあえなくオジャンになった。
 
お互い、日々の業務に忙殺される中で、ごくたまに電話やメールで近況を報告し合っていたが、なにぶんにも仕事上の付き合いが消滅してしまったため、会う機会に恵まれないまま、月日は流れていった。
 
そんなある日、突然A氏から電話をもらった。挨拶もそこそこに、A氏はいきなり「僕、会社を辞めることになりました」と言うではないか。
 
突然のことゆえ、呆然とする我輩に対して、A氏は電話口で「まあ、早い話が上と衝突したんだよ。よくある話だけどね。今までも衝突したことは何回もあったけど、今度ばかりは僕もガマン出来なくて、『あっ、そーですか。ほな辞めさせてもらいます』って言っちゃった」と語った。
 
それからほどなく、A氏は東京での転職先を見つけ、夫人を伴って本帰国することになった。
 
突然の辞職劇は、よほどショックだったのだろう。どこぞのお店でささやかなる送別会を、と主張する我輩に対し、A氏は「いやね、今は繁華街でパ〜ッと騒ぐ気分じゃないんだよ。ほっとはしてるけど。よかったら、我が家でゆっくり食事しない?」と言った。
 
「そりゃ喜んで行きますよ」と答え、ワイン片手にA氏宅を訪問した。夫人手作りのタイ料理をご馳走になり、ワインを飲みつつ思い出話に花を咲かせ、ふと気がつくと深夜前。
 
「おっ、こりゃいかん。居心地良くて、すっかり長居してしもうた。次回は東京で会いましょ」と、慌ててA氏宅を辞して、ご飯配り地区へと向かった。
 
★暗闇で遭遇した災難
 
当時の我輩のエサメニューは、カリカリエサ(ドライキャットフード)&ミルクで、その晩も片手にカリカリ、もう片手にミルクを抱え、暗い路地裏へと急いだ。
 
「ちょっとぉ、今夜はやけに遅いじゃん。腹減ったよぉ」とばかりにニャオニャオ鳴く常連をなだめつつ、カリカリエサを路上に置こうと身を屈めた瞬間のこと。「ん?」背後に異変を感じた。
 
と思う間もなく、臀部に鈍痛が走った。そしてタタタッと走り去る音。にゃんと、にゃんと、あろうことか、痴漢被害に遇ったのである。
 
走り去る赤いシャツを着たオトコの背中に向かって、思わず「バカヤロウッ!」と言いそうになったのであるが、次の瞬間思いとどまり、「オタンコナスゥ!」とイマイチ間の抜けた罵声を浴びせた。
 
「バカヤロウ」と言えなかったのには、訳がある。第二次世界大戦時の軍隊用語の名残として、この言葉は東南アジア一帯で広く知られているからである。
 
英語での罵声も一瞬考えたのだが、以前野良猫へのエサやりを巡って、猫嫌いの華人おやじと英語でケンカした際、迂闊にも我輩が英語で暴言を吐き、オヤジに散々罵られた苦い経験があったため、一応自粛したのである。
 
(こんなことを書くと、「コイツ、ケンカばっかりしてるの?」と思われそーだが、普段の我輩は、沈着冷静をモットーにしている。←本人がそのつもりなだけかも……)
 
書くと長くなるが、罵声言葉を逡巡したのはほんの2〜3秒である。もちろん、加害者オトコはすたこらさっさと逃げてしまった。
 
始めは「っにゃろ〜!」と腹立たしさに襲われたものの、気持ちが落ち着いてくるに従って、どっと孤独感と言おうか、疲労感に襲われた。
 
★2人組ポリス登場
 
日本人の感覚からすると、大した被害ではないのだが、シンガポールでは痴漢行為は決して軽犯罪ではない。
御用になれば、禁固刑のみならず、鞭打ち刑の対象にもなり得る。
 
ふらふらと相棒(シンガポール人パートナー)に電話すると、「一応、警察に届け出るべきだ」と冷静に言われた。一緒になって怒ってくれるかと思ったのだが、意外にも落ち着いて対応された。
 
「えっ、こんな夜中に警察?」と思いもしたが、加害者をのさばらせてはならん、と思い直し、結局警察に電話をした。5分ほどで、パトカーが現場に到着。華人とマレー系の、いずれも若い2人組の警察官が降り立った。
 
まず「どうしました?」と聞かれ、事の次第を報告。次第と言っても、あっという間の出来事だったから、さして話す内容もない。
 
路地に入って屈んでいたら、見知らぬオトコが背後からしのびよって、ワタクシメの身体の一部を触って逃げたんザマス、とまあ、こんな感じである。「大した被害ではないんですけどね……」と、我輩は弁解気味に蛇足を付け足した。
 
2人組ポリスのうち、リーダー格っぽい華人警察官が、「ところでアナタ、何でこんな時間にこんな所にいたの?」と尋ねた。そりゃあ、他人から見ればアヤシイよね、ワタクシって。
 
「い、いやね、あたしゃ毎晩、ココで野良猫にエサをあげているんです。以前、この近所にあった会社に勤めていてね、その頃からの日課なんですよ」という我輩の返答に、若い警察官は、エイリアンを見るかのような眼差しを向けてきた。
 
その後、華人警察官はパトカーの無線を使って、「ホニャラモニャラ……」と本署と連絡を取り合っていた。
 
その間、相棒のマレー系警察官は、猫と聞いて親近感を持ってくれたのだろう(イスラム教信仰上、マレー系人には猫好きが多い)、興味津々といった風で「アナタ、エサは何をあげてるの? カリカリ、それとも缶フード?」なんて、呑気な質問をしてきた。
 
結局、我輩はパトカーに乗せられ、警察署まで出頭するハメになってしまった。路地での尋問に対し、「大した被害じゃないんですよ」と言い張ったのだが(実は出頭するのが面倒だった)、「いえ、警察署で正式に被害届けを出して、警察の事情聴取を受けていただきたい」と言われ、選択の余地なぞなかった。
 
★事情聴取初体験
 
警察署に到着すると、驚いたことに、相棒の姿があった。我輩が電話した際はピンと来なかったらしいのだが、時間が経つにつれ怒りが募ったようである。
 
取り調べの担当警察官(刑事サン)が、突発事件の現場捜査に出てしまったとかで、警察署受付で30分ほど待たされた。
 
やっと担当警察官登場。時刻は既に午前1時近くで、コンタクトレンズをはめた目が疲れを訴えることしばし。
 
浅はかにも、警察の事情聴取はすぐ終わるだろうとタカをくくっていたのだが、あにはからんや、さすが警察! 
微に入り細に入りの質問で、当方困惑することしきり。
 
タダでさえ英語が流暢でない上に、いつもならオネンネの時間帯で頭はボーッとなっているのに、とにかく質問内容がメチャクチャ細かい。例えば、こんな感じである。
 
警察:犯人の服装は見たの?
我輩:はい、上は赤いシャツでした。下は黒っぽいズボンでした
    が、正確に何色かまではわかりませんでした。
    濃い色だったことだけは確かです。
警察:なるほど。で、襲われた場所は?
我輩:○×ストリートから入った路地です。
警察:○×ストリートのどの辺りから、どの方向に向かって
    入った路地?
我輩:え〜っと、○×ストリートのちょうど中ほどから△○駅
    方面に向かって入った、小さな路地です。
    車両は通行できません。バイクだけ通れます。
警察:その路地に明かりはあるの?
我輩:街灯はありません。暗がりですね。
警察:暗がりって、どの程度の明るさ?
我輩:えっ…(モゾモゾ)、あのう、とにかく暗くって……。
警察:アナタ、さっき、オトコは赤いシャツを着ていたと言った
    よね? 街灯もない暗がりなのに、どうして“赤いシャツ”
    だとわかったの?
我輩:それはですねぇ、確かに街灯はないんですが、近隣
    店舗の明かりが漏れていて、少しは明るいんですよ。
    シャツは赤だったから、はっきりわかったんです。
    あれが、グレーとかベージュだったら、わからなかったと
    思います。
警察:う〜む。「少しは明るい」って、だからどの程度?
我輩:う〜ん、だからぁ…(ココで、見かねた相棒が英語で明る
    さの説明。幸い、相棒はエサやりに付き合ってくれたこと
    があり、明るさの程度を知っていた)。
 
ってな具合で、警察での事情聴取はみっちり1時間半続いた。
 
担当警察官は眼光鋭く、いかにも切れ者といった感じの御仁だった。聴取終了後、一転して顔つきまで柔和になった彼はこう言った、
 
「僕もね、自宅近くで野良猫にエサをあげてるんですよ。本当は飼いたいんだけどね、女房が猫嫌いでダメなんです」。
 
「あらら、そりゃまあ……。我が家にはですね……」と、我が意を得たりとばかり、事情聴取では言葉に詰まり気味だった我輩もベラベラと喋り出し、これまた猫好き、自称”猫の奴隷”の相棒も話に加わり、束の間の猫談義と相成った。
 
そして、同輩意識に包まれた我々は、警察官と握手を交わして警察署を辞した。
 
警察では、万一再被害に遇った時のための緊急連絡カードを渡された。3カ月後には警察から「その後、異変はないですか?」という電話連絡ももらったが、結局、犯人は捕まらなかった。
 
被害に遇ったこと自体は不運だったかもしれないが、通常は体験しないであろう警察の事情聴取を体験出来た(?!)と思えば、慰めにならぬでもない。そして、コワそうに見えても猫好きな刑事サンがいることを認識出来たことも、ささやかなる収穫である。
 
                
 
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 おねげえだ お縄はコワい ご勘弁
 
 
 
 
 
 
 

うっやばいっ 薄目開けつつ 狸寝入り
 
 
 
 
 
 
 
 
 

そら逃げろ ポリスと聞いて 尻向ける
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  「サツが来る前に
   カタをつけてやるっ!」
  「にゃぬっ!」
   (C)Naomy
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ぎゃっ逮捕?! 舌なめずりで 無実主張
 
 
 
 
 

猫違い わかって安堵の びっくり顔
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 今日もまた 天下泰平 伸び日和
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

まん丸に なればあったか これぞ猫
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

エサ遅し お腹ぺこぺこ 背でスネる
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 木の上に 登ってみれば また楽し
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

 むむ、ココが出頭した警察署。
  ポリスコンプレックスっちゅう
    シャレた名前の建物。
    なかなか立派だしょ?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

どったのら? 舌出し問うは おやじ猫
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

エサタイム 負けじと急ぐ トラの二乗
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

何回も 試してみるは クールKISS
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

はちわれと うつろなマナコで 何思う
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 やっぱコレ シメはいとしの 梅花ヨ
       
 
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