悪性リンパ腫奮戦記

     

悪性リンパ腫奮戦記

 
 ここでは、父の悪性リンパ腫に対する奮戦の軌跡をご紹介します。オマケとして、その時々の
 家族としての私の思いも、綴ってみました。記述内容には留意しましたが、医療関係者ではない
 ので、悪性リンパ腫に関する医学的詳述ではなく、父の病状経過概要と家族の心理に焦点を
 あてた闘病記です。この悪性リンパ腫の記録が、読んでくださった方にとり、何らかのご参考に
 なれば嬉しいですっ!
 
 2006年5月10日から6月27日までの入院の詳細に関しては、「転院と緊急入院」、「入院看病記
 をご参照くださいネ。
 
 尚、父は悪性リンパ腫が発覚する以前から、前立腺がんを患っていましたが、これはホルモン療法
 が奏功して、最期まで経過は良好でした。
 
               ★           ★           ★
 
 ここでひと言。父の場合、高齢(80歳代)、前立腺がん罹患、B型肝炎キャリアという厳しい
 予後因子があったため、抗がん剤の投与量制限(通常の半分程度)、抗がん剤の吟味、副作用・
 危険性の要考慮など、悪性リンパ腫の治療に際して、複数の大きな制約がありました。
 こうしたケースは稀と思いますし、仮に予後因子が父と同じ方であっても、悪性細胞の性質や
 個人の体質は千差万別です。
 
 また、がんの治療法も常に前進しています。
 悪性リンパ腫では「完治」という言葉は使われないものの、一般に比較的抗がん治療が効きやすい
 がんと言われており、悪性リンパ腫から回復された方も多数いらっしゃいます。
       
時    期 父 の 奮 戦 経 過 当時私が思ったこと
2004年 秋頃 父が頸部のしこりに気づき、かかりつけの大学病院へ行く。「異常なし」との診断。 診断を聞いた時、浅はかにも「よかったあ!」と思ってしまった。今にして考えれば、あれは誤診だったと思う…。
2004年12月
      末
年末に一時帰国して、久しぶりに父と再会した私が、父の声の微妙な変化を風邪と誤解。本人が気にして、再び大学病院へ。悪性リンパ腫※1の疑い濃厚と言われ、病理組織検査。 父の行動力に感服する一方で、リンパ腫疑惑を知り、内心大ショック。ただ、医師が「がんの中では治療効果が高いんですよ。青島幸男さんも体験した病気です」と励ますように言ってくださったのが有難かった
2005年1月 生検組織の病理診断で、悪性リンパ腫と判明。抗がん剤による化学療法として1月末から月1回、計6回のR-CHOP療法※2開始。初回のみ約1カ月入院。高齢でB型肝炎キャリアでもあるため、投与量は通常の半分に。長期入院で足が弱ったと本人ぼやく。 「何で父がそんな病気に…」とやり場のないくやしさ。当時私は海外で会社員だったため、入院中は数日しか行けなかったが、親戚が見舞いに来てくれて有難かった。「般若心経を唱えると良い」と本で読み、必死の思いで般若心経を暗記、毎晩就寝前に暗唱した。
2005年7月
    下旬
R-CHOP療法終了後のMRIとCTの検査結果が良好で、寛解(病変が殆ど消失した状態)の希望大。 最高に嬉しい!主治医も嬉しそうに検査結果を告げてくれた。並行治療中の前立腺がんの治療も順調。有難い。
2005年8月
      末
PET検査の結果、頸部、左脇の下、胃の横の3カ所における浸潤が判明。 軽い気持ちで検査結果を聞きに行き、再びショック。でも、ここでメゲるわけにはいかん!
2005年9月 初旬にセカンドオピニオンとして、都内のがん専門病院を訪問、医師の無神経さに唖然。新たな化学療法※3開始に伴い、20日から10日間大学病院に入院。 セカンドオピニオン体験談は、次ページをご参照ください。あんまりくやしくて、いっそ医学部の社会人入試を受けようかと真剣に思った。結局はメゲてしまったが(涙)。
2006年1月 注射と内服薬による化学療法が続く。10日腫瘍外科(耳鼻科)の口腔内部診察で、思いのほか経過良好、抗がん治療の効果が認められると診断。 出張先のブルネイで吉報を聞いた。余りにもの嬉しさに、踊り出したい気分だった。本当に嬉しくて、「何とか病気を克服出来るかも」と一縷の望みを抱く。
2006年2月 中咽頭に悪性リンパ腫が見つかる。24日から1日1回、週5回、計4週間の放射線療法開始。毎日せっせと通う。 20日間も通院し続ける身を案じたが、都合で初日しか付き添えず離日。未だに、とても申し訳なく思う。
2006年3月 局部の放射線療法が無事終了。その後29日から、抗がん剤注射と内服の併用によるVP療法※4開始。内服薬の種類が多く(6〜7種類)、市販のピルケースでは収納難のため、父は自分でピル箱(紙箱の中に正方形の細かい仕切りを作ったもの)を製作。 一時帰国して会った父は、顔つやも良く、とても病身とは思えなかった工夫してモノを作るのが得意な父だけに、薬ごとに異なる服用を混同しないためのピル箱を自作。父のモノ作り魂が健在で嬉しい。何としても、父を励まして回復させたい、とひたすら願う。
2006年4月 抗がん剤の副作用により、19日、赤血球MAP(人赤血球濃厚液)を輸血。日常生活は、自宅で平穏に送る。 拙宅を訪問してくれた旧友が、約20年ぶりに父と再会。「お元気そうだ」と励ましてくれた。このままフツーの生活が続いてほしい。
2006年5月 GW頃から歩行困難、食欲減退、突然の睡魔(意識レベルの低下)という症状に。10日、大学病院近くの私立病院に緊急入院。腰椎穿刺検査の結果、骨髄転移が判明、髄注(脊髄液中への抗がん剤注入)療法開始。一時は髄注療法が奏功し、食欲、筋力、意志の覚醒状態のいずれも向上。本人も意欲的に治療に専念。副作用の骨髄毒性のため、26日濃厚血小板を輸血。 姉から国際電話で緊急入院を知らされた時、地面が崩れ落ちるように感じた。成田空港から病院へ直行、予想以上に容態が悪化していた父を目の前にして大ショック。しかし、数日後には髄注の効果が現れ始め、介護が楽しみに。毎食平らげてくれるのも嬉しい。「車椅子生活になるだろうが、1カ月後ぐらいには帰宅出来るかも」と思い始めた。秋になったら、夫も一緒にみんなで温泉に行こう!
2006年6月 3日容態が悪化。悪性細胞が脳神経に及び(脳を保護する髄膜に浸潤)、顔面神経が麻痺。まぶたが開けられず、口は閉じられず、食事も摂れず、会話も殆ど出来ない状態に。12日さらに悪化。しかし、意識は旅立つ前日(26日)までしっかりしていた。家族と親戚に見守られ、27日永眠(直接の死因は肺炎)。享年86歳。 髄注療法の効果が認められた5月末日、安心した私は愚かにも一旦離日。連日姉に電話するも不安は拭えず。12日午後、容態悪化の連絡を受けすぐ帰国。予想以上の悪化に大ショック。親戚や知人の見舞い、激励が本当に有難かった。最後まで、「父はきっと家に帰れる」との希望を捨てられなかった。
 
 ※1 悪性リンパ腫: 白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍で、リンパ節が腫れたり、
 腫瘤ができる病気(似た病気にリンパ性白血病があるが、これは悪性細胞の増殖場所が血液や
 骨髄である点が悪性リンパ腫と異なる)。悪性リンパ腫にはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫
 があり、日本人の悪性リンパ腫の約90%は非ホジキンリンパ腫。病期(病気の進行度)はT〜Wの
 4段階に分類される。
 
 病型は病理学的に多数に分類されるが、非ホジキンリンパ腫のうち、頻度の高い病型はびまん性
 リンパ腫とろ胞性リンパ腫の2型。病型はまた、どの程度強い治療が必要になるかとの観点から、
 低悪性度、中悪性度、高悪性度に分類される。ただし、高悪性度=重病というのは誤解で、高悪性
 度型リンパ腫でも化学療法によく反応し、治癒するケースもある。父は、日本人の中〜高悪性度
 非ホジキンリンパ腫の代表格と言われる、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫だった。
 
 悪性リンパ腫は一般に、固型がん(肺がん、膵臓がんなど)に比べ、優れた治療成績が得られて
 いる。治療には、抗がん剤を使用する化学療法と放射線療法があり、手術が必要となるケースは稀
 で、造血幹細胞移植が有効なケースもある。治療法はリンパ腫の病型や広がりなどにより異なる。
 
 ※2 R-CHOP療法: CHOP療法は、悪性リンパ腫の標準的な化学療法で、悪性リンパ腫に対
 して最も有効な抗がん剤と言われるビンクリスチン、エンドキサン、 アドリアマイシンの3剤に、
 副腎皮質ホルモンを加えた4剤による併用療法。これに、B細胞リンパ腫に有効なリツキサンを
 併用したのがR-CHOP療法。2006年7月現在、中〜高悪性度B細胞リンパ腫の標準治療とされる。
 
 ※3 新たな化学療法: ここで言う新たな化学療法とは、ロイケリンとメソトレキセートの抗がん剤
 2剤を服用する治療法。この時点で、強い治療(ESHAP、CHOP、COPなど)を行うか、弱めの治療
 (複数の抗がん剤内服またはリツキサン単独、及び局所の放射線療法の併用)を行うかの二者択一
 だったが、危険性(特に感染症)を鑑み、弱めの治療を選択した。ロイケリンは毎日1回、メソトレキ
 セートは週1回の服用。その後、2〜3週毎に採血検査を行い、数値を見ながら投与間隔、抗がん剤
 の種類を変更していった。
 
 ※4 VP療法: 抗がん剤(V)オンコビンとステロイド剤(P)プレドニンの組み合わせ療法。
 オンコビンは週1回の注射、プレドニンは内服。症状を見ながら、投与量や投与間隔を調節する。
 
 参照ウェブサイト
 愛知県がんセンター/がんの知識/悪性リンパ腫
 新潟県立がんセンター新潟病院 非ホジキンリンパ腫
 東洋漢方相談所
 
                            
 
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